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アトランタの銃撃事件は構造的な性差別と人種差別の産物

解説】カナダの老舗新聞『エドモントン・ジャーナル』に掲載されたもので、筆者のセイラ(サラ)・マーはカナダのアボリショニスト・フェミニスト団体「Asian Women for Equality」のメンバーで、マクギール大学の博士課程在籍の院生。

セイラ・マー

『エドモントン・ジャーナル』2021年3月24日

 3月16日夜、アトランタにある3つのアジア系マッサージ・パーラー店で、単独犯による銃乱射事件が起こった。詳細はまだ明らかになっていないが、容疑者のロバート・アーロン・ロングは、マッサージ・パーラー店に頻繁に通っていた白人男性であることがわかっている。ロング容疑者は、今回の事件の動機を「セックス依存症」を取り除きたいという願望と「復讐」であったと主張している


 ロングは人種的動機を否定しているが、今回のアトランタでの銃撃事件を、新型コロナ・パンデミック後に急増した反アジア人種差別と結びつけるのは大きな飛躍ではないだろう。8人が殺害され、そのうち6人がアジア系女性だったのだ。


 アジア系のマッサージ・パーラーは、北米の主要都市には必ずあり、私たちのコミュニティの日常風景に組み込まれている。地元のコーヒーショップの隣、近所のコインランドリーの上、食料品店の向かい側などで見かけることができる。カナダの多くの都市は、カナダの法律に違反しているにもかかわらず、これらの事業に対して合法的な許可を与えている。これらの施設は広く普及しており、そこにいるアジア人女性の多くは、人身売買され、だまされ、誘拐されて来ている。2016年の推定480万人の性的人身売買被害者のうち、99%が女性であることを考えてみてほしい。東アジアからの性的人身売買被害者は、世界のほぼすべての地域で、最も高い割合で見出せる


 売買春は、ミソジニーおよび、女性の身体に対する男性の特権の上に成り立っている産業だ。多くの女性たちは少女時代に性産業にリクルートされ、多くは貧困にあえぎ、他の選択肢を持たない。ロング容疑者のような男性がお金を払って女性の身体にアクセスできるというのは、本質的に搾取的であり、当事者の女性たちに肉体的・心理的な被害を与えている。しかし、性産業は、男性の期待や信念、社会における女性の扱いにも影響を与える。女性は男を誘惑し、淫乱で、性的に利用できる存在だという男たちの信念は、私たちが必死になって打ち破ろうとしているレイプカルチャーの不可欠の一部だ。


 売買春は人種差別の上に成り立っている産業でもある。アジア人女性が性売買でどのように宣伝されているかを見れば、そのことがよくわかる。若くて小柄。芸者ドール。この街に来たばかり。これらの特徴はいずれも、男性の買春者にアピールするものであり、アジア人女性は弱く、従順で、しかも淫らでエキゾチックだというステレオタイプを暗示している。これらのステレオタイプは、私たちの職場、家庭、人間関係など、社会の中でアジア人女性がどのように扱われるかにも影響を与えている。


 アジア人女性に対するこのような性差別的で人種差別的な見方こそが、ロングがその暴力の動機となったと称している「セックス依存症」や「誘惑」の中心にあるものだ。


 いつものことだが、このような事件が起こるたびに、性売買の全面的な非犯罪化、つまり、当事者の女性だけでなく、ピンプや買春者も非犯罪化することを支持する人たちが必ず出てくる。このような政策は、女性が屋内の売春店で自分の身を守るための手段を講じることを可能にするのだとよく主張される。いや、私たちは同意しない。買春者や売春店経営者を非犯罪化しても女性の安全を守ることはできない。なぜなら、女性に対する暴力を実行しているのは他ならぬ彼らだからだ。売買春を完全に非犯罪化することで、セックスのために女性を購入することを正常化することは、女性に対する男性の性差別的な態度を強化するだけだ。


 アトランタの銃撃事件は衝撃的で恐ろしいものだが、そこに不思議なことは何もない。ロバート・アーロン・ロングは、売買春によっていっそう蔓延するようになった性差別と人種差別の産物なのだ。アジア人女性として、私たちは自分たちの権利を求めている。身体的な不可侵性、自律性、望まぬセックスにノーと言う権利を。私たちは、労働と性を搾取されることなく、経済的な安定を求めている。私たちは、反アジア的人種差別を終わらせ、セクシュアルにされた人種差別に終止符を打つことを求める。そして私たちは、搾取と男性の暴力からの保護を国家に要求する。


This article was originally published in English in The Edmonton Journal.



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